三重県で最も小さい町、朝日町。この地区の集落組織を約5年前に法人化したのが、農事 組合法人匠ファーマーズ三重朝日だ。
「誰かが辞めたら、圃場は全部こっちに来るわ」と 役員の水谷充伸さんが言うように、小麦を中心に生産しながら、離農者の田んぼを一枚ま た一枚と引き受けてきた。同法人が育てたお米や小麦は、地元の小中学校の給食にも使わ れている。
水谷さんは、個人でも約20町の水稲を手がける。保有する自動操舵は一社だけではな い。 「個人はトラクター2台にFJDが付いとる。法人の方は他社製が1台、FJD AT2FJDが2台やな」

代かきも田植えも、ボタン一つで詰める
代かきは幅約4メートルのドライブハローを使う。長いハローほど、目視ではアゼ際の幅 寄せの調節が難しくなる。
「離し気味にしておいて、自動操舵の設定で少しずつ幅寄せを調節しとる。5cm離した り、逆に5cm被せたり」
田植えでも、自動操舵が変えたのは精度そのものより水位だった。以前は、苗を植える基 準線であるマーカーが見える範囲でしか水位を決められなかった。

「今までは、マーカーが見えなあかんもんで、ギリギリぐらいの水位にしてたんよ」 マーカーに頼らず植え付けられるようになると、水を落とさずに済むようになり、せっか く散布した除草剤を無駄にすることもなくなった。
「風が強い日だとマーカーの跡が見えんから、どうしても水を落とさなあかんかって。水 を落として田植えすると、苗も痛むんよ。自動操舵があれば深水で植えられるからラクや ね」
田植え作業のあり方を変える
田植えは「まっすぐで、なおかつ30センチのラップもぴったり」。自動操舵を使っていなかった頃は条間が徐々に広がったり狭まったりしたが、自動操舵を使うと、その精度が収穫時にも効いてくる。
これにより、収穫時にも次のようなメリットが生まれる。
- 倒伏したイネや小麦は、機械から見てどの条に株があるか分かりにくくなる
- 播種がまっすぐで条間が均一なら、コンバインのデバイダ(株を分ける装置)が株を巻き込まずに条の間を通せる
- 自動操舵によってまっすぐで均一な条間を実現することで、倒伏した圃場でも収穫作業を行いやすくなる。
「コケとる田んぼでも、収穫できるから、それはだいぶええね」
ハンドルを持たない時間に、おにぎりを食べる
田起こしでは、「重ね幅をゼロでやって、全然隙間ができへん」というところまで精度が上 がった。
「作業時間も早くなったし、余裕が出る。ハンドルを持っとらんでいいから」 繁忙期でも、その余裕が実際の行動に表れる。
「代かき中とか、忙しい時期でも、ここ(運転席)で昼ご飯を食べながら作業できる。作業 中におにぎりも持てるようになった」
現場経験に基づく継続的な最適化
これだけ自動操舵を使い倒している水谷さんだが、まだ満足できているわけではない。 特に、ベースラインの並び順の変更機能は、水谷さんが繰り返し要望してきた点だ。
「近い順とか、あいうえお順とか…何回も頼んだんやけど。まあ、あいうえお順が一番え えね」
新しいバージョンでは現在地から近いベースラインが自動で並ぶよう改善された。なお、 実際の登録では番地順に入れているという。 「番地で入れとんよ。番地なら大体順番になるやん」
季節を通じて積み重なる小さな改善
代かき、田植え、播種、収穫まで。水谷さんが話したのはどれも田んぼの中の細かい話 だ。その積み重ねの先で作られたお米や小麦が、今は町内の給食に並んでいる。